黒い狙撃手④
ある木曜日早朝仄暗い朝に目が覚めた。
左足のふくらはぎが「こむらがえり」になったのである。
痛みで目が覚めた後、二度寝を決め込んだがふくらはぎの痛みが酷くて
眠ることに集中できない。
そのままシャワーを浴び、朝食を済ませ、着替えていつもより早く仕事へ
向かった。
蒸し暑く人気のない繁華街に近づくと、不穏な空気と異臭が漂い始めた。
今日は木曜日だ。
つまり、「ゴミの日」である。
そして「夏真っ盛り」でもある。
下北沢の多くの飲食店が、数日ため込んだ生ゴミを、ゴミ収集車に飲み込んで
もらうために、それぞれの指定場所である道端に投棄する。
腐った生ゴミが異臭を放つということは、ヤツらがビニールを食いちぎり、
中の廃棄される食料ゴミを漁っているということに他ならない。
野犬や野良猫でさえヤツらのテリトリーには入れない。
もちろん攻撃の対象になるからだ。
ニオイに敏感な私は、もちろん異臭のする道を選ぶはずもなく、裏道を選択し
早足で駆け抜けた。
いつも通る道を左に見ると、やはり想像通り大きなゴミ袋が食いちぎられ、
中の廃棄物が道一杯に散乱していた。
「酷いな」と呟いて私は駅の方へ歩を進めた。駅の50m手前にも八百屋の前の
ゴミ袋がこじ開けられ、同じように散乱していた。
ゴミを避けるように歩こうとアスファルトに気を取られたのが私の失敗だった。
下北沢にて