THE HURT LOCKER
アカデミー賞を受賞した「THE HURT LOCKER(ハートロッカー)」を昨晩観た。
つい最近にも書いたようにこの作品は是非劇場で観たいと思い、レイトショーを
観に行った。そして私は完全に嵌ってしまった。
ツボに入ったのである。上映される131分間、最初から最後まで観ていて緊張感
に包まれた。凄い映画である。
舞台は2004年。今なお続くイラク戦争。アメリカ陸軍に属する爆発物処理班3人
の中隊が主人公なのだが,10分も観ているとドキュメンタリーかと思うほど、異常
なまでのリアリティと緊張感を味わうことになる。
私達にとって、非日常な戦争という状態こそが日常になってしまった者達の、その
現場でしか体感することが出来ない「命」を賭した(ほんとにこの表現そのまま、
脚色無し)尋常ではない「日常」38日間を淡々と追いかける。
ハードボイルドであり、ストイックであり、プロフェッショナルであり、また冒険
談でもある。
そしてその非日常的日常(スターリンの歌詞であったような…)がそれぞれを静かに
蝕んでいく人間の弱さは、リハビリテーション不可能な人の危うさを生み付ける。
兎に角、私の今年度No.1の映画は既にこの3月中旬において決定してしまった。
そう思える程凄い映画である。
ただ、見終わって思ったのは、この映画の何処にアカデミー賞を獲得する要素が
あったのかさっぱり判らない。雰囲気はインディーズ。金もかかっていない。
アメリカの好きな家族愛も出てこなければ、教訓めいたメッセージもさほど強くな
い。もちろんハッピーエンドでも無いのにだ。でも凄い映画である。
既にご存じのように、監督のキャスリン・ビグローはその名の通り女性である。
女性がこんな作品を撮るとは恐れ入った。爆発シーンの映像は素晴らしいが、決し
て女性に受けることはない作品だし、大半の女性が興味を抱くこともない映画であ
る。ある意味異常なまでに男性的なハードボイルドなので、今でも監督が女性であ
るというのがしっくりこない。私などの想像を遙かに超えたイマジネーションが
キャスリン・ビグローには働くのだろう。凄い女性である。
ハリウッドが本気を出したらこうなるのだ、ということを思い知らされる作品でも
ある。やはり奥が深い。
あのラストシーンを観るために、もう一度映画館へ脚を運んでも良いと思った。
凄い映画である。
下北沢にて