3000年前の氷
一昨日、懇意にしているBarのマスターからメールが届いた。
ナンと、「アラスカで採取された3000年前の氷塊」の一部が
手に入ったということだった。
それで昨晩仕事で遅くなり、オマケに仕事上の面倒な話満載の
飲みに誘われ、味がわからないまま黒霧島という焼酎を呑んで
しまった。男三人であーだこーだと五月蠅く目黒の居酒屋で喋って
いたので、何を喰ったかも覚えていないままお開きになった帰り、
一人でふらりと「アラスカで採取された3000年前の氷」を飲みに行った。
まぁ、口直しといったところか。
平日であったためか客はまばら。二十歳そこそこの若輩が、必死に
女を口説いているのを尻目に、マスターからレクチャーを受け、
Maker's Markというバーボンのロックでその氷をいただいた。
500万年前の南極の氷に較べると色の白さは薄い。つまり、気泡が
少ないのだ。度数の強い酒を垂らしてもプチパチ音はせず、時折、
ピシッとかキシッとか、割れる音がするくらいなのだが、酒そのものの
味はかな
りマイルドになる。舌に刺さるような度数の酒がトロリと
呑みやすくなってしまう。氷の目は粗く塊となった水質の成分がやはり
違うのが判る。同じ酒を30年間飲み続けているから判ることかもしれ
ないが、こういった酒の楽しみ方もあるということだ。
アラスカにしろ南極にしろ私は一生行くことはないと断言できる。
にもかかわらず、東京のど真ん中でそれを味わう事が出来るというのは
僥倖というほかない。運がよいのだと思う。
またしても悠久の時を、ひと舐めづつ舌で味わうという、またとない
至福の時間を持てたということに感謝して、アイステクノを聴きながら、
明日の夜にまた呑みに行くのだろう。
下北沢にて