箱
前述の「地球と食の映画祭」で、中島莞爾監督作品「箱」をレイトショーで
観た。以前から噂だけ聞いていて非常に気になっていた作品だったので、
「南極料理人」に続いて観たわけであるが、何とも摩訶不思議な世界観の
シュールな作品だった。基本的に私の好みで、極端にコントラストの強い
モノクロ映像で、出演している俳優さん達も全く知らない役者ばかりである。
海外での評価が高く、しかしながら日本での国内配給はなかなか難しいのだ
ろうと思う。
しかし、先読みのし辛いストーリーや極端に台詞の少ないその物語の中で、
一番存在感を示しているのがタイトル通り「箱」なのである。
箱の中に機械と共に納められている「鉱物」の”想い”とは何なのか。
まぁ、これ以上書いてしまうとこれから観ることがあるであろう方にネタを
ばらすことになってしまうので割愛するが、人がもたらす文明の本質的な
役割を静かに示唆してくれているように思う。
兎に角そのコントラストの強いモノクローム映像は、美しくまた荒々しく
私の心の中に根を張ったのである。
何処の世界なのか、いずれの時代設定なのかは全く関係なく、
その描かれる世界というのは、ロシア映画の名作、ゲオルギー・ダネリア監督
の「キン・ザ・ザ」や、ダーレン・アロノフスキー監督の「π(パイ)」、
或いは、ジャン・ピエール・ジュネ監督のデビュー作「デリカテッセン」
はたまた、畑は違うが関西の「維新派」などのアナザーワールド的世界観に
通じる、サイエンスフィクション的異次元映像が心地良い。
なかなか観ることが叶わない作品かもしれないが、何処かでチャンスに恵ま
れることがあれば、是非見てもらいたい作品の一つである。
ヴィム・ヴェンダースがエグゼクティブ・プロデューサーで名を連ねる
中島莞爾監督作品の「クローンは故郷をめざす」が、2010年1月18〜23日
の間、下高井戸シネマにてアンコールレイトショーされるようである。
私はまず間違いなく観に行くであろう。
下北沢にて