月明かりと影 居待月の夜

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その日は朝起きてからめまぐるしかった。友人と会ったり、本屋へ

行ったり、CDショップへ寄ったり、スーパーで買いだししたり、

クリーニング屋にシャツを出したり、部屋の掃除をしたり。

日も傾き「疲れた疲れた」とコーヒーで一服。寝ころんでいると、

ドアをノックする音がした。開けてみると誰もいない。ただ、影が

そこにあるだけだった。

「坂本宰の影」がお誘いに来てくれた。

その夜は三軒茶屋Rain on the Roofにて「月明かりと影 居待月の夜」

というライブが行われる夜だった。

出演は、LakesideとSakana、そして空間演出を手掛けるのが「坂本宰の影」。

慌てて着替えを済ませ。待っていてくれた「坂本宰の影」と下北沢から

茶沢通りを三軒茶屋に向かって歩く。

月明かりも美しく、歩くにはうってつけの夜だ。

20分ほどで三茶に着くとすぐにRain on the Roofへ。階段を上ると、

丁度ミュージシャン達のリハーサルが終了したばかりで、坂本宰氏が

機材の調整をしていた。

「やぁ、久しぶり。こないだの高円寺ありがとね。」と私がいうと、

「いやーどうもどうも…」などとご挨拶。気がつくと「坂本宰の影」は、

既に新月の形に形態変化している。

ライブが始まると新月から半月、半月から満月、そして煙となり、水の波紋

となる。とろりとした液体のような形態変化を施し、音が満たす空間を上から

下へ、右から左へと縦横にはいずり回る。

どうやら今回はヒト型では姿を現さないようだ。

心地良く流れる音楽とオーディエンスをまるごと懐に抱きかかえるような

「坂本宰の影」はライブ終了後何処ともなく掻き消えた。

私は翌朝が早いので挨拶もそこそこに帰路につく。

来た道を逆に三茶から下北へ。

空にはふくよかな月が煌々と輝いていた。

無口な「坂本宰の影」は、今頃月明かりで出来た何処かの闇の中で、

一杯やっているのだろう。


下北沢にて

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このページは、press_4dmode1が2008年10月20日 22:15に書いたブログ記事です。

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