身辺整理〜P.I.L
2枚目は「Public Image Ltd(略称PiL)/Metal Box」。
言わずとしれた元セックス・ピストルズのヴォーカリスト・アジテーター、
ジョニー・ロットン(改めジョン・ライドン)がピストルズ解散後にポスト・
パンクを標榜しヴァージン・レコードから出した逸品である。
ジョン・ライドンの他、ベースにジャー・ウォブル、ギターにキース・レヴィン、
ドラムスにマーティン・アトキンスというメンツ。実験的且つエキセントリック
でソリッドな音塊を即興的ニュアンスも垣間見せつつ創り上げている。
脳天に響くマーティン・アトキンスのドラム。昆虫の羽音を増幅させ、その独特の
音を引っ掻き、切り刻むかのようなギタープレイで魅せるキース・レヴィン。
単純で淡泊極まりないフレーズを、極端に分厚く太くシーケンスさせるジャー・
ウォブル。そこに、イスラムの祈りのような、または浪曲のような、或いは第三
世界の祭典における呪術師の叫びに似た絶叫で詩を乗せて詠うジョン・ライドン。
この79年にヴァージン・レコードから出たセカンド「PiL/Metal Box」は、
当時、単純であったパンクの幻想を追い求めていたオーディエンスを完全に
裏切り、ジョン・ライドン曰く「パンクは死んだ!」という言葉をリアルに
感じさせた。
マーティン・アトキンスのドラム音質とキース・レヴィンのギターの乾き具合が
大好きだったのだが、当時20歳そこそこでベースを弾いてたりした私は、
ジャー・ウォブルがレコーディングでフェンダージャズベースのマーシャルから
出たナマ音とライン録りの音をミックスして分厚い壁のようになったベース音に
憧れた。
写真を見てもらえば一目瞭然であるがMetal Boxというだけあって、映画の
フィルム缶ような缶パッケージにLPサイズ45RPMの3枚組。
値段も当時¥6,800はしたんじゃないかと記憶する。
たしか、この缶パッケージは初回20,000枚だけ(枚数間違ってるかも)で、
当然、これの後に紙ジャケの33RPMも発売された。
レコードはLP33RPMよりLP45RPMの方が格段に音が良い。そのこだわり具合も
セックス・ピストルズのスタンスとは全く違う。
重くフリーキーで奔放な音楽が苦手な方には薦められないが、今現在聴いても
その鮮度は高い。
誰もが演奏できて唄えるロックではなく、このメンツでしか成し得なかった、
或いはこのメンツだからこそ出来た。という代物である。
一聴してみては如何か?でも苦情は受け付けませんので悪しからずご了承下さい。
下北沢にて