影を追うにはうってつけの日
幸せな音楽とパフォーマンスの出会いというモノにはそうそうお目に
係れない。
室内に入ると、会場であるplan-Bはその荒々しい無機質なコンクリート
打ちっ放しの壁面と、使い込まれた板張りの床が無造作に剥き出しに
なっている。
床には風邪を緩やかに浮けた白い布が伏せられ、そこに「坂本宰の影」
が産み落とす轍のような水滴の影が、室内全体に染みつき、ゆらゆらと
震えながら観客を迎える。
今までには無かったオープニング。
横川理彦が登場し、照明が落ちた途端、静かにそれは始まる。
奏でられるヴァイオリンの音は闇の中をするすると潜り抜け、水の影と
交わるかのように空間に滲んでいく。
そして不意に奈落に光が灯る。光の束を携えて、「坂本宰の影」が床下
から湧き上がってくる。
床に設えられていた白い布は引き上げられ、スクリーンとなり、ついに
影の演舞が始まるのだ。
ヴァイオリンの音色は時には引っ掻かれ、千切れ、長い間合いを呼吸し、
パーカッシヴに叩かれる。音。そして闇の中の光と影。
前回の二人のセッションも素晴らしかったが、今回はそれを楽に凌ぐ空間
芸術といっていい出来だ。これ以上言葉にすることに意味は無い。
機会があれば是非見に行っていただきたい。
http://web.me.com/sakamotoosamu/
下北沢にて