影を追うにはうってつけの日

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幸せな音楽とパフォーマンスの出会いというモノにはそうそうお目に

係れない。

室内に入ると、会場であるplan-Bはその荒々しい無機質なコンクリート

打ちっ放しの壁面と、使い込まれた板張りの床が無造作に剥き出しに

なっている。

床には風邪を緩やかに浮けた白い布が伏せられ、そこに「坂本宰の影」

が産み落とす轍のような水滴の影が、室内全体に染みつき、ゆらゆらと

震えながら観客を迎える。

今までには無かったオープニング。

横川理彦が登場し、照明が落ちた途端、静かにそれは始まる。

奏でられるヴァイオリンの音は闇の中をするすると潜り抜け、水の影と

交わるかのように空間に滲んでいく。

そして不意に奈落に光が灯る。光の束を携えて、「坂本宰の影」が床下

から湧き上がってくる。

床に設えられていた白い布は引き上げられ、スクリーンとなり、ついに

影の演舞が始まるのだ。

ヴァイオリンの音色は時には引っ掻かれ、千切れ、長い間合いを呼吸し、

パーカッシヴに叩かれる。音。そして闇の中の光と影。

前回の二人のセッションも素晴らしかったが、今回はそれを楽に凌ぐ空間

芸術といっていい出来だ。これ以上言葉にすることに意味は無い。

機会があれば是非見に行っていただきたい。

http://web.me.com/sakamotoosamu/


下北沢にて


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このページは、press_4dmode1が2011年10月11日 23:08に書いたブログ記事です。

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