雨と影とゲシュタルト崩壊

|

昨晩、渋谷UPLINK FACTORYに、坂本宰の影「モノローグ」を

見に行った。井の頭線 神泉駅からてくてくと東急本店を横切り、

霧雨で煙る繁華街のはずれに近いこ洒落たカフェ・ギャラリー併設の

多目的スペースへ向かった。

カウンターで受付をしようとしていると、客人の中に手を振る人物が

いる。Aufhebenのギタリスト、シューヘイ氏だ。

影が現れるまでこそこそと二人で歓談していると不意に照明が落ちて

いく。空間に貼られた白幕に水滴が映し出され、時間と共にそれは

次第に形を変えていく。そして映し出されている水の塊は、水銀の様

にも見え、時として得体の知れない生き物が蠢くような動きをする。

既に私が認知している「水」ではなくなる。意識がそれを「水」として

認識しなくなっていく過程が自分の中にリアルに解る。

一種の「ゲシュタルト崩壊」のようなものである。

光が点滅し、坂本宰の影がその陰影に息づき始めると、それは更に強く

なり、影は影の認識から乖離していく。

照明器具のふれあう金属音や接触音が、やたらと乾いた響きをランダム

に奏で、白幕に投影されている影は”坂本宰”から遊離し、”坂本宰の影”

として人格を形成し始める瞬間、空間は闇に紛れる”坂本宰の影”のオー

ガナイズする空間に変換される。

見事なものだ。この”感覚”に私は魅了されている。

日常積み重ねられた情報によって認識しているハズの感覚が微妙なズレ

を起こし、自らが認知しない”何か”にすり替わっていく感覚。

この感覚が楽しく面白いのだ。


パフォーマンスが終演し、坂本宰氏と軽く挨拶を交わした後、霧雨に

煙る街に出た。

夜の渋谷に溶け込んだ”坂本宰の影”は、容易なことでは見つけ出せない

であろうが、バーボンでもヤリながら自分の中の「ゲシュタルト崩壊」

を楽しむことにしよう。


下北沢にて

このブログ記事について

このページは、press_4dmode1が2009年11月14日 16:28に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「オムライスその2」です。

次のブログ記事は「オオイタンニッキ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01