press_4dmode1: 2009年8月アーカイブ

砂漠の薔薇

|

最近読んでいる本で、船戸与一「猛き箱舟」という長編に嵌っている。

上下巻ページ数にして有に1200ページは下らない。

飲み仲間から是非にと強く薦められて読んでいるのであるが、これが

面白い。

年代は昭和60年代で、平成に切り替わる直前の設定。

舞台となるのは、地中海を望む北アフリカ、アルジェリア、モロッコ、

そして東京である。

内容は、一人の男が傭兵を志し、初めてのミッションで見捨てられ、

死線を彷徨いながら日本に単身戻り復讐を始める、といった内容。

こんな風に書いてしまうとつまらなさそうに思ってしまうが、いやいや、

なかなかどうして、ぐいぐい引き込まれてしまう。

これを読む前に、映画にもなった「天使と悪魔」上中下巻も読んだが、

個人的にはそれよりかなり惹きつけられる。なるほど薦めてくるワケだ。

私のツボをよく知っているな。と感心する。

北アフリカ・マグレブのサハラ砂漠での描写が入念に書き込まれており、

タバコと酒を呑む典型的な血飛沫舞うハードボイルドがガツンとくる。

作品としては古く、また携帯電話の無い時代の物語なので、若い人達

にはついて行けない部分もあるかもしれない。

まぁ、そんな事はどうでもいい。


私は小説を読むときには必ずi-Podで音楽を聴きながら没頭するのが

スタイルなのだが、さて、ここで問題となるのは何をBGMにしながら

読み進めるのかということが重要なのである。

この選曲を間違えると面白い小説も、途端につまらなくなる。

当然である。映画で音楽の果たす役割が重要なのと同じで、文章を読み

脳裏に描く映像にしっかりと符合する音を選ばないと、ノリが悪くなっ

てしまうのである。

そしてこの「猛き箱舟」に見事に嵌ったのが何あろうLed Zeppelinの

音楽だった。ここを読んでいる人達でこのバンドを聴いたり知って

いる人は極めて少ないと思うが、Led Zeppelinといえば無く子も黙る

ハードロックバンドの帝王であり、また一般的にミーハーな捉えられ方

をしても仕方がないのであるが、初期の頃の音源も含め、特にアルバム

「Physical Graffiti」と「Presence」に置いては、この小説に驚くほど

ものの見事に嵌っている。

そこで何故嵌るのだろうと考えてみた。

ギタリストであるジミー・ペイジは、最近逝去されたレス・ポールの

作ったギターを好んで使い、レス・ポールギターといえばブルースと

いう代名詞がつく程、ウェットな太い中低音が特徴であり、その音色が

ブルースギタリスト達に好まれていた。にもかかわらず、数年ぶりに

聴くジミー・ペイジのギターは湿り気など全く感じさせず、黒魔術や

ヘヴィさもあまり感じさせず、ひたすら短い1〜2小節の格好いいリフ

やフレーズを繰り返しているだけに過ぎない。そしてカラカラに乾いて

いる。

ジミー・ペイジは決して上手いギターを弾けるギタリストではない。

しかし短いリフを作らせたら右に出るものがいないほど才能を発揮する。

つまりループフレーズの神様と呼べるほど独自の音色を持っている。

ブルースをやりたくて仕方がなかったのであろうが、演奏するとピック

が引っ掛かり、つんのめってブルースにはならなかったギタリスト。

そんな塩梅だから、音もカラッカラに乾いてしまったのかもしれない。

だから灼熱の無音の砂漠に音が似合うのかもしれないと思ったのである。


そしてヴォーカリストのロバート・プラントが、事故で復活が危ぶまれた

折、静養していたのが確か北アフリカ、モロッコだったように記憶する。

そのモロッコからレコーディングのためにヨーロッパへ戻る機内で作詞

したのがアルバム「Presence」の中のA面1曲目「Achilles Last Stand」

(アキレス最後の戦い)という10分を越す大作だったりする。

灼熱の乾ききった砂漠。吹く風の音以外何も聞こえない無音の砂丘。

そういえば、ロバート・プラントのアメリカでのソロアルバムジャケット

には砂漠に赤い旗をなびかせていたように思う。

 

先般神戸に帰省した折、馴染みにしている友人のスタンドスペインバル

でジンを飲っていると、昔ながらの友人達が集まってきた。

立ち飲みといっても12〜15人も入れば満杯で、狭い鰻の寝床という表現

がしっくりと嵌る店内は大騒ぎになる。

その店に私が行くときは前もってメールを入れてから行くのが不文律

のように出来上がってしまっているので、友人のマスターが親しく

している常連を呼んで「お久しぶり!」ってな感じになるのである。

職業も、通訳・翻訳家、居酒屋経営、古着ショップのオーナー、

潜水艦に乗船する自衛官、長距離トラックのドライバー、神戸の

有名なパン屋さんの経営者、アパレル、ブライダル、カフェ経営、

建築設計、内科医等様々でである。

楽しく談笑しているときカウンターの冷蔵ケース(ピンチョス:おつまみ

お料理を入れている)の上に乗せている異様な物体が目がとまった。

知り合いの誰かが、エジプト旅行のお土産としてお店に置いていった

らしいのだが、その奇っ怪な様態に似合わない「砂漠の薔薇(デザート

ローズ)」と呼ばれるものらしい。


これは化学記号ではCaSO4・BaSO4。つまり「石膏」で出来ている

ものと重晶石で出来ているものもあるらしいのだが、基本的にこれが

見つかるところは、かつてオアシスが存在した、水が湧き出ていたと

いうことになるらしい。そのオアシスが干上がる過程で、水に溶けて

いた硫酸カルシウム(CaSO4)や硫酸バリウム(BaSO4)が結晶生成し、

成長し、形態を成していくことによって出来るものということだ。

中には人の背丈よりも大きな巨大なものも見つかっている。

出来るのにも年月がかかるだろうし、どのような形状になっていく

かも予測がつかず、何故このような形に成長していくのか未だ解明は

されていないという。


太陽光と熱風と砂。

それらが長い年月をかけて育んだデザートローズ。

これを発見した最初の人間が、花が咲くことが出来ない環境で、これを

砂漠の薔薇と命名したとき、いったい何を想い、どんな気分だったんだ

ろう?

明日には「猛き箱舟」を読み終わってしまう。

これを読み終えることで私の夏は終わるような錯覚がある。

何か切なくもの悲しい気分だ。


下北沢にて


砂漠の薔薇.JPG

このところ雨が多いな

|
ここへ来て最初の週は、結構雨降りが多かったんだけど、その後はずっと晴れてて暑い日が続いてたんだけど
このところ数日は雨が降る。
ずっと降ってるわけじゃないんだけど、時折かなりの量だったり、しょぼしょぼ降ってたりだ。
今日も降ったりやんだり、あるいは晴れ間が見えたり…
曲作る合間に、遅い昼を食べるために街へ出た時には、幸い降ってなかったので
いつものベトナム人がやってる中華(笑)を、外のテーブルで食った。

ここには、数学の卒論をクリスマスまでに書き上げたいと、毎日朝から大学へ行って頑張ってるルイス君と
ウエブプログラマーのマティアス君が居る。
マティアスは、自由出勤制らしく旅行ばかりしている。
だからあまり顔を合わせる事がない。
ほぼルイス君と僕しかこの家には居ないし、彼は朝から夕方まで学校へ出かけるので
僕は一人でここで音楽を作ったり、散歩に出かけたりだ。
そして、僕がちょうどここへ来た日までは、もう一人「はな」(ってきこえるけど実はHanna)って女性が居たんだけど
他の国へ留学に出たので、一部屋ずっと空いてた。
あ、僕の部屋も、Martaって声楽家の卵の女性が、イタリアの実家へ帰ってるので
本当なら二ヶ月ほど空いてるはずだったんだけれど
僕がその半分の期間を又借りしたってわけ。
どうやら明日から、空きだった、元Hannaの部屋には新しい住人の女性が明日から来るみたいだ。


広くて気に入ってるバルコンは、夜に一人でワイン飲んだりタバコ吸ったりするのに
気持ちいいんだけど、雨が降ると表に年中出しっぱなしの
ソファーは濡れているので、座れない。
どこかの骨董市で買ったものなのか、もらったものなのか知らないけど
一応革張りなんだけど、濡れたりボロボロになってても
だれも気にとめていそうにないところが、いいな(笑)


12082009009-s.jpg

肉売りおじさん

|
P1010539-s.jpg毎週末のフリマので肉売りパフォーマンスをするおじさん。
ヘッドセットつけて、BowWow(古っ)みたいなトラックに乗って
肉を売る。
先にお金を渡すと、「パパのおつまみには、ジャーキーを…」など
色々な口上を述べながら、でかい袋に山ほど肉製品を詰めてくれる。
あまりに多すぎるから、買ったことはないけど…

今日は午後遅くから、コミュニティーペーパーに載ってるような規模の
個人がやってるフリマ?ガレージセールを覗きに行った。
ほんとにちっちゃくって、不要ながらくたを売ってるだけ(笑)
手作りのピザみたいなのや、ジュースとか売ってる。
集合住宅の中庭でこういうことやっては、条例違反なのか
それとも飲食物を売っているのがいけないのか
わからなかったけど、警官が数人きた。
笑顔で住民と話してるけど、はたしてどうなったんだろう?
結末を見ずに、アイスを食べに移動した

P1010546-s.jpgP1010548-s.jpg









不思議な音

|
P1010530-s.jpgP1010529-s.jpg















ここへ越してきてから、気になっていたのだが朝というか、昼前頃にガラスの瓶をでかい袋にまとめて
それをたたき割るような、えらく刺激的ででかい音がする。
玄関の階段や床が木で出来ている、この集合住宅では、すべての音が反響してて
出所がずっとどこで音がしているのかわからなかった。
本日、遅い朝飯をダラダラ食っていると、おぉ、またあの音がしているではないか。
急いで録音機を持ち出し。ドアを開けてみると
なんと、Deutsche Postの制服を着た長髪のお兄ちゃんが
すごい早さで、集合ポストへ郵便物を入れている最中だった。
明日は、彼が来る前に玄関で待機していようと思う。

たいてい一日一回は、20分くらい歩いて街に出ることが多い
ちょっとした買い物だったり、遅い昼飯に安物のチャイニーズフードを食いに出かけたり。
チャイニーズフードの話はまた次回にするけど
そういうときには、必ず、いわゆるストリートミュージシャンを見かける。
パンクな格好をしたギターの弾き語りやアコーディオンのおっさんは、問題外として
弦楽合奏や管楽器合奏も、必ず道ばたで演奏している。
著作権の関係で、録音してもネタになる訳じゃないからしないけど
とても音程が良くって、演奏もこなれていて気持ちがよい。
Jenは「よく音大生が練習がてら演奏してるのよ」って言うけど
いままで見かけた弦楽や管楽器のグループは、音大生と言うには
あまりに年齢が違いすぎる(笑)

昨日はデジュリドゥーの演奏を見かけたので、録音させてもらった
もちろん小銭はあげた。
それを今夜は素材にして、断片を日本へ送った

と言うわけで猫は無関係…
先日お茶飲みに立ち寄ったDJの友人宅で暮らしていた猫







ネット事情

|
nokia-n86-8mp.jpg
P1010462-s.jpg














ほぼ毎日外で録った音をループやスケッチ化して日本へ送るという作業を続けてるけど
来た日から10日間居たWG(Wohnungsgemeinschaftいわゆるルームシェア)では、
それほど気にもとめなかったのだけど
新曲のスケッチを日本に送ることを始めたら
どうも転送速度が気になる。
たかだか62小節程度のスケッチでも
日本の無料ファイル転送システムなど使うものなら、忘れた頃に正常にアップロードされてたりする。
ヨーロッパ経由のファイル転送システムを
ここ数日使っているけれど、まぁまぁ
少しは早くなったんじゃないかと言う気もする。
でも、気になるので転送速度を調べたら
なんと過去のISDN時代のような数値しか出てこなかった。
ふーむ、一般家庭に光ファイバーをなんて言ってるのは、日本、韓国、一部アメリカだけなのか?
ここじゃ、そのISDN程度を普通にみんな使ってるみたいだし、
隣の部屋のプログラマーが「遅いよ」って言った以外は、不満を聞いたことがない。
ちなみにもう一部屋は、大学で数学を専攻する若者が暮らしていて、
少しだけ大学で日本語も勉強し始めていることが判明したので、
時々日本語とドイツ語で話をしている。

普通の電話回線とモデムでネットをしていた時代のことを、思い出す。。
リンクを辿ってゆくと、アメリカからヨーロッパへ経由すると、途端に遅くなった。。
日本とアメリカの海底光ケーブルとか、よく知らないけど、
日本はアメリカの一部だから早くって、ヨーロッパは海外だからとかそういう問題なのか?

ここに来てすぐに、欲しかったNOKIAの新機種を買った。
こちらでは、まだ以前の日本のような、回線会社との契約を含んだキックバック販売のようなことが行われていて、
ほんとはここに銀行口座や住民票でもあれば、もっとずっと安価で購入は可能だったのだけれど、
契約なしで買っても、まぁNOKIA自体が日本から撤退してるし、日本でアジアンバージョンを探して買うよりは安かった。
言語が、英語、ドイツ語、フランス語など選択できて辞書や予測入力出来るところが気に入ってる。
もちろん日本語も手を加えれば読み書きできる。





このアーカイブについて

このページには、press_4dmode12009年8月に書いたブログ記事が含まれています。

前のアーカイブはpress_4dmode1: 2009年7月です。

次のアーカイブはpress_4dmode1: 2009年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01